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WR0107 ☆ A. R. Burks他 『誰がコンピュータを発明したか』 工業調査会 ☆  −歴史 に埋もれかかったABCマシンの発掘によって、歴史が塗り変えられた

(1999/6/3)

マッキンテリジェンス 代表:大座畑重光



著者のひとり、アーサー・バークス博士は(歴史的な)ENIAC開発チームの6人の科 学者の一人ともいわれ、IAS(プリンストン高等研究所)計算機の開発、EDVACにも関 わった計算機界で多大な貢献をされ、J.フォン ノイマンの"Theory of Self-Reproducing Automata"(Univ. of Illinois,1966)「自己増殖オートマトンの理 論(岩波書店、高橋秀俊監訳),1975」の出版(編集者として)したことでも日本で 広く知られている。

また、Burks,Arthur W.;Goldstein,Herman H.;and von Neumann,John. 1946. Preliminary Discussion of the Logical Design of an Electronic Computing Instrument. Princeton: Institute for Advanced Study.や、William Aspray and Arthur Burks, eds., Papers of John von Neumann on Computing and Computer Theory(Cambridge : MIT Press and Los Angeles : Tomash Publishers,1987) など、歴史的文献を著している。

本書のタイトルでもある”誰がコンピュータを発明したか”ということの解釈にはな かなか複雑な意味が込められ、専門家の間ではいろいろな論調がある。

現代における最も洗練された機械、コンピュータの創造には多くの人が関わり、そし て多くのアイデアが随所に複雑に入り組んでいる。ENIACよりも前にデジタル型で電 子式の計算機があったなどとはほとんどの人が知らなかったに違いない。これまで、 現代のコンピュータに至るまでにENIAC(プログラム固定内蔵方式)とEDVAC(プログ ラム可変内蔵方式)の2つの発達段階を経て進化したものであると多くの人が認識し てきたように思う。

すなわちデジタル電子計算機の起源はENIACであると認識していた。しかし1973年の ENIAC裁判で、ENIACの技術の多くの部分、特に本質的な部分が、実は1930年代後半に アイオワ州立大学で製作されたアタナソフとベリーのABC(Atanasoff-Berry Computer)マシンの技術を継承したものであることが明らかになった。

デジタルという言葉を生みだし、2進法の採用、真空管の電子スイッチング加算回路 としての利用、メモリのジョギング(現代用語で”リフレッシュ”)方式など多くの 独創的アイデア、発明に満ちたアタナソフのABCマシン(特殊目的)が発端となり、 それがENIAC(汎用目的)に継承され、後続の計算機に影響を与えた。

すなわち、現代のプログラム可変内蔵方式のデジタル電子計算機へ至るまでに大きく 3段階を要したということになる。(ABCマシンは特殊目的、ENIACは汎用目的)

ENIAC裁判の意義は大きかった。歴史に埋もれかかったABCマシンの発掘によって、歴 史が塗り変えられた。本書は、ABCマシンの本質的な原理、歴史的位置、ENIACとのか かわりなどを当時、当事者に近いところにいた計算機科学者の視点でわかりやすく紹 介している。

(1999/5 原稿作成)


書名:「誰がコンピュータを発明したか」
(原題:Alice R. Burks and Arthur W. Burks: THE FIRST ELECTRONIC COMPUTER ---The Atanasoff Story---,The University of Michigan Press.)


アリス・R・バークス
アーサー・W・バークス 共著
大座畑 重光 監訳
マッカーズ 共訳
工業調査会(定価:本体3,800円+税)